あの忌まわしい抗争から、数ヵ月の時が過ぎた。
"あの"忌まわしい抗争とは勿論、俺の幹部就任に始まるあの一ヶ月の抗争のことで、俺はあの抗争においてボス見習いとして大いに活躍し、時には処女を捨てオヨメにいけない体になりながらも、結局はあの抗争を終結に導いて見せた。ああー。俺ってホンっトにカッコいい。

ボスを救出した後も、あの抗争は一件落着とは行かなかった。
市警を懐柔しーの、シマを取り締めーの、スパイを洗いだしーの。そんないっそがしい後始末のために、ファミリーはデイハンを駆けずり回った。
抗争の根源であるイヴァンなんかは、ここで挽回しねえと!って何時も以上に頑張っていたらしい。ま、当然ですねへへ。ざまあみろ!

そんなファミリーが駆けずり回ってる中、俺は何やってたかって?俺のso coolな活躍を期待してた奴にゃァ悪いけど、…ただ病院でごろごろしてただけ。中々気楽なもんだった。
イヴァンの奴は俺が気になって気になってしょーがなかったみたいで、度々見舞いに来てくれた。

度々、ってのはウソ。毎日。

気持ち悪いよおお!アイツ、なんか俺の怪我に責任なんて感じてたみたいで、試しに頼んでみたら、手淫なんかしてくれるぐらい。
でもなんやかんや俺をイかせた後に、
「怪我治ったら覚悟しとけよ」
なんて言ってたから期待半分恐怖半分。ま、とりあえずしばらくはイヴァンを顎で使える喜びを噛み締めようと思う。


「イヴァーン」
「あンだよ」

俺はベッドに寝っ転がったまま、首を捻ってベッド脇のイヴァンを見た。イヴァンはベッド脇の椅子に座って、まるで俺のかーちゃんかなんかみたいに林檎なんか剥いてる。
その手付きは中々に器用で、ナイフの扱いが上手いのはジュリオだけじゃねえな、なんて思った。

「俺車買おっかなあー」
「なんで」
「あった方が便利じゃねえかなって。あとイヴァンのヴァルキリーちゃんの具合がチョー良くて勃起しそうなくらいだったから?」
「きったねえことぬかしてんじゃねえよ!!…でもまあ、ヴァルキリーの良さが判るのは誉めてやる。俺がおンなじの買ってやるよ」
「はァー??何が悲しくててめえとお揃いしなきゃいけねえんだよいらねえよ」
「てめえ……」

イヴァンが林檎を剥く手を止めて俺を睨めつけた。俺はわざと挑発するような笑みを作って、ふふん、と鼻を鳴らす。イヴァンが青筋をひくつかせながら笑い返してくる。おおー、こわ!

「それにさ、あんな真っ白なメルセデス、俺に整備できると思うか?お前してくれんの」
「部下にやらせろよ」
「俺にゃ部下なんか一人もいねえよ。知ってンだろ?……ああ、シモの世話をしてくれる奴なら一人いるけど」
「なっ」

イヴァンは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。つるっとその手の内から林檎が滑り落ちて、俺は手を伸ばしてなんとかそれをキャッチした。ラッキードッグの大安売り。

「……どォしたア、イヴァン様」

金魚のように口をパクパクさせるイヴァンへ、俺はにこやかに訊ねる。手にする林檎を丸かじりしながら、俺はイヴァンが再起動するのを待った。

「………ジュリオか?」
「はあ?」

数分かけて再起動してそれかよ。

「ばァか。ねーよ」
「じゃあ、ベルナルド」
「アホ」
「ルキーノ」
「あのな…」
「おい、誰だよ。言えよ」
「…イーヴァーン。お前ホントにバカだな」
「なっ」

誰がバカだ!ファック!とかイヴァンががなり立てるのに溜め息を吐いて、頭に血が昇って真っ赤になっているイヴァンへ、俺はやさしぃく微笑みかけてやった。

「バーカ。この世界で俺のケツに執着するアホはてめえしかいねえよ変態」

と、言って身を起こし、イヴァンの唇に軽くキスをしてやる。…ってあれ。またフリーズしてやがる。お前は年代物のパソコンかよ。早漏のくせしてまァ、再起動のおせェこと。

「ってなワケでさ、車がほしーのよ。所長とお揃いのアルファロメーオなんて今候補なんだけど。……ジュリオとの思い出もあるし」
「…………だァ、れェ、がァ」
「あン?」
「変態かああああああ!!!!調子乗ってると殺すぞ!!!!!」
「いやーんジャンこわーい。チビっちゃいそう」
「て言うか?その変態にケツ掘られて悦んでるてめえは?もっと変態じゃねえの?」
「ぐっ………」

バカイヴァンにしては、珍しく鋭い切り返しだ。言葉の詰まった俺を見て、イヴァンが愉快そうな顔をした。何か俺をからかう言葉でも吐こうとしたのか口を開いて、しかし何か思い付いたように固まった。俺は首を傾げて見せた。イヴァンは笑みを消すと、何処か凄みのある無表情で俺を見下ろした。

「………おいジャン」
「何だよイヴァン」
「…………アルファロメオのジュリオの思い出たァ、なんだ」

おっ。珍しく話聞いてんな。

「イカ臭せえ思い出さ」
「てっめえ……挿れさしたのは俺が初めてとか言ってた癖に……」
「挿れられてはねえよ」
「ぐっ………!そ、そう言う問題じゃねえんだよ!」
「そう妬くなよ。てめえは俺のケツ処女奪うわ初フェラ奪うわ耳の穴に舌突っ込むわ乳首弄るわでやりたい放題じゃねえかよ。なんだ?まだ突っ込みたい穴あんのか?」
「……てめえなあ………」

イヴァンは深々と溜め息を吐いた。俺の顔を呆れたような顔で見て、それからまた一つ溜め息を吐く。ま、短い付き合いでもないし、俺がウソ吐くタチではないのは理解してくれたらしい。

「……今度、車のカタログ持ってきてやる。退院したら買ってやる」
「おおっ!ボスやっさしー!!感動しすぎてパンツの中涙ぐっしょりだから触ってくんない??」
「ばーか。何処に濡れる要素があったんだよ…ほんッと、変態だな」
「変態って言うな変態」

まあ、ホントは全く濡れていない。流石の俺も車買って貰えるとかで勃たねえよ。

「でも俺さあ、車すぐベッコベコにしちゃうんだよねェ。イヴァンのヴァルキリー一世みたいに」
「あれは俺がやったんじゃねえだろ!!!!」

ぶっといダイナマイトを突っ込まれて昇天しちゃったヴァルキリーに変わって、イヴァンに舞い降りた全く同じ車ヴァルキリーちゃん二世。

「てめえの車の買い換えの早さは、別れた彼女を口実に違う女とファックするみたいなだったなァ」
「ねえと不便なんだよ!!!あのダッセエセダンで歓楽街行ったら大笑いされるっての!!!」
「とかなァんとか言っちゃってェ。俺よりヴァルキリーちゃんの方が好きなんでしょォ?浮っ気者ォ」
「は………」

俺がイヴァンのシマのマダムのように身をくねらせてねちっこく言って見せると、イヴァンは帰宅したらオンナが間男とファックしてた旦那みたいにぽかんとしていた。
…あンだよ。そこはキモいって何時もみたいにキレろよ。なんか恥ずかしくて、顔に朱が差してんだろうのか自分でわかる。

「………ンだよくっそイヴァン!!この変態!!焦らしプレイがお好みですかァ!!!」

俺はその間抜け面に林檎を投げ付けてやった。流石は腐ってもCR:5幹部っつーか。イヴァンは眼前の林檎を難無くキャッチした。

<改ページ>
「…………おい、ジャン」
「あンだよ早漏」
「うるせえ。さっきのもう一回言え」
「そーーーーろーーーーーーー」
「違えよバカ!!!」
「じゃあ何だよ」
「………そ、その、何だ。……好きとか。浮気者…………とか……」
「…………」

次は俺がぽかんとする番だった。…いやいや。お前。さっきのはジョークだろ?イヴァンには難しかったかも知れねえが?………ああーー、もうーーー。俺は布団を引っ張ると、その中に潜り込んだ。

「何勝手な自己解釈してんだこのスカタン!!!てめえは思春期の童貞くんですかァってんだよ!!!」
「なっ………て、てめえがそれらしいこと言うからだろうが!!!ばーか!!!」

バカにバカと言われるのは気分が悪い!俺は布団から飛び出して、イヴァンの眼前に指を突きつけた。仰け反ったイヴァンに尚指を突き付ける。

「俺たちゃァダチだ。セフレでも恋人でもねえ。ヰタ・セクスアリスを共にしてはいるけどよ……。な?」
「……………ああ」

イヴァンは何か言いたげな顔をしていたが、結局は切なそうな顔をして目を逸らした。……前から思ってたけどお前、ホント顔に出るよな……ヤクザだろ。腹の読み合いなんかなったらどうすんだこのバカ。
俺は溜め息を吐いた。イヴァンが悪さを咎められた子供のような目で俺を見る。俺はマンマみたいな優しい笑顔で、イヴァンに笑いかけてやる。あっ。こいつもっと苦い顔になりやがった。扱いにくいな、このバカは。俺が悪いのかよ。……ああ、もう。
しょうがないので俺はこのバカにも判るように、行動で示してやることにした。


「イヴァン………」
「っ………!……お、お前…」
「黙ってろ。舌噛むぞ……ん、…っ」

何人もの部下にあんなエラソォな顔で命令してるクセして、ビビリだなホント。俺はイヴァンの顎を片手で支えると、ぎょっと引っ込んだイヴァンの舌先を自分の舌で追い掛けた。

「……っふ……う…」

イヴァンがやり返してこないのを良いことに、俺は好き勝手やらせてもらった。

「………っ……!」

しかしイヴァンも段々と冷静さを取り戻したらしく、やり返すように俺の口内を犯してくる。ざらついた舌が、俺の粘膜をする感覚にゾクゾクした。
元々大して力も入っていなかった、イヴァンの顎を支えていた手を外すと、今度はイヴァンが俺の顎を掴んだ。爪を立てられる、ピリッとした痛み。

「………ば、か…痛ッてえ……爪、切れって……」
「っ……こンぐらい、堪えろ」
「は、あ…っ……ン……切れよ。そんな爪突っ込まれっかと思う、とォ……っ、ゾッとする」
「たまンねェの間違いだろ…?……は、エロい顔」

わざとらしいリップノイズを立てて、イヴァンが唇を離した。ついでに顎を掴む手も外されると、俺はドッとベッドに倒れ込んでしまう。勿論、誘ってるワケじゃねえ。イヴァンも何だかんだで、病人に手を出すほど悪くはない………俺は横目にチラッとイヴァンの股間を見た。

「キスだけでおっ勃ててんのか。変態」
「チッ……てめえがエロい面してやがるからだろ」
「ま、人のことは言えねえんだけどな」
「はァ!?」

イヴァンが瞠目して、俺の股間を見た。おいそんなしっかり見ンなよ。俺のムスコさんがびっくりしちまうだろ。

「と言うワケで。抜いてくれよ。手で良いから」
「ばッ……てめえ………」
「わりィなァ病人で。まだお前に突っ込ましてやるほど余裕ねえわ」
「ふっざけんなああああ!!!!!」

イヴァンは怒りのためなのかなんなのか、顔を真っ赤にして叫んだ。その大音量に耳がキーンってなって、俺は頭を押さえた。

「…おいイヴァン。俺は病人なんだぜ?」
「ジャン。ジャンカルロ・ブルボン・デル・モンテ」
「…………なんだよイヴァン・フィオーレ」

突然改まったイヴァンに、俺は眉を潜めた。まさかここで『掟』持ち出す気じゃねえだろうな変態。懐かしい。
イヴァン様はにやっと笑うと、俺の頭の横に手を付いた。俺はなんとなくゾッとした。

「ジャン、来週、退院だってなァ」
「な……っ?!何でてめえが知ってンだ!!!」

言ってねえのに!と喚く俺の胸に、イヴァンが手を乗せた。と、思うとその指先が胸の上を滑って、質の悪い入院服の上から乳首を引っ掻く。

「っ…、くっ………」
「相変わらず感度良好か?」
「…お陰様でオールグリーンさ」
「へえ……?」

イヴァンは悪役みたいに喉を鳴らして笑うと、服の中に手を突っ込んで指先でヘソをなぞった。

「ベルナルドがよ。ジャンがもうすぐ退院だって」
「ああ……」

そういや、ベルナルドには言ったかもしれない。しかしベルナルドの奴、何でこいつに教えるんだよ。明らかに面白がってやがんな。

「………俺には教えなかった癖に」
「いッ!?」

思考から引き戻されて、俺は慌てて胸の上のイヴァンを見上げた。目が合ったイヴァンはまるで、手負いの獣みたいな顔をしていた。潰れるんじゃないか、ってくらい掴まれた乳首が痛い。

「イヴァン……!!男の乳首なんて、本来要らないモンなんだぞ!取れたらどうする!?」
「要るのかよ。この尻軽」
「はあ……?」
「初めて挿れさせたのが俺でも、入院中に違う奴の咥え込んでたんじゃねえのか」
「……あのなあ」
「俺には怪我人だとか言って奉仕しかさせなかったクセに、ベルナルドにはしてやったのかよ」
「お前………」
「うるせえよ」

イヴァンはベッドに土足のまま上がると、俺の上に馬乗りになって唇を重ねてきた。そのままあれよあれよと言う間に上衣を脱がされて、それで両手を縛られてしまう。
…おいおい、懐かしいことだらけだぞ!て言うかお前はバカか!ベルナルドとは何でもないってェの!!――……と言いたいのに、唇が重なっているせいで、俺が発せるのは無様な喘ぎ声くらいだ。
イヴァンは俺の口内を蹂躙しながら、ベルトもない何とも心もとない、ゴムのゆるゆるの下衣を片手で引きずり下ろし既に先走りでぐしょぐしょのパンツも引きずり下ろしてしまう。それでやっとイヴァンは唇を離した。

「…は、あ………」

俺は久々の新鮮な空気を噎せながら吸い込んだ。窒息死したらどうしてくれんだバカ。ちょっと向こう側に顔も覚えてない両親が見えたような気がするぜ…。

なんて思ったのも束の間。俺が胸で息をして呼吸を整えていると、イヴァンが荒い息を吐きながら俺の耳の中へ舌を突っ込んできた。その生暖かさに鳥肌がぶわっと立って、ついでに腰に痺れが溜まる。イヴァンは舌で耳の中をかき混ぜて、唾液と一緒に言葉を流し込む。

「心配しなくても気持ちよォく、イカせてやるよ。……ただし、後ろでな」
「イヴァ――……っ、う、あ……ひ……っ」

とりあえず俺が誤解を解こうとしたのを遮るように、イヴァンが俺のアヌスに親指を突っ込んだ。久しぶりの痛みに射精とは全然違う意味で頭がスパークする。



<改ページ>
「ンの……へったくそォ!もっとゆっくりやりやがれ!」
「うるっせえな。大人しくしてろっつゥの!」
「ナースコール鳴らすぞ」
「はあ?ナースコールゥ??来るワケねえだろンなもん。ヤクザにカタギが関わりてえかよ」
「ぐっ………」

と言葉に詰まるが早いか。…あ。インスピレーション来た。俺はアヌスを掻き回されながら、痛みを堪えてイヴァンへ笑みを向けた。

「……ボスがあんまおせェと、部下来るんじゃねえの」

お前結構長いこと林檎いじってたし。と付け加えてみる。イヴァンはそれを考えていなかったらしく瞠目すると、直ぐ不機嫌に眉を潜め舌打ちした。


「……そんなに俺としたくねえのかよ」
「…………」

…こいつってホント、バカ。
犬みたいに頭くしゃくしゃに撫でてやりたくなったけど、残念なことに腕は縛られたままだった。

「………お前に挿れられて以来、誰にも突っ込まれても突っ込んでもいねえよ」

わざわざ言わせんなバカ恥ずかしい!それから首を無理矢理起こして、またイヴァンの唇に噛み付いてやる。イヴァンがぽかんとアホ面晒してンのが腹立ったから、俺はもう一言、付け加えてやった。

「キスだってお前としかしてねえし。お前俺がケツでしかイけねえ変態になっても、面倒見ろよ。この、ド変態」
「…………」
「……はあ。」

それでも動かないイヴァンを急かすように、俺は自ら腰を揺らした。抗争のころにゃァ親指よりもっとぶっといもの突っ込んでたワケだけど、久しぶりだから親指一本でもキツかった。それでも解さないことには辛いのは俺なので。

「イヴァン。腕ほどけ。それか指増やせ」
「あ………」
「さっさとしろバカ。お前が待てできねえってことは俺解ってンだからな」

俺はまだ全然萎えてないイヴァンのテントを顎で示した。そう言う俺もまだ全然萎えちゃいなかった。なあ、と催促した俺へと、イヴァンが向けて見せたのは何とも言えない顔だった。

「…何だよ」
「お前なあ……」
「な……んんっ!…ってお前!何で抜くんだよ!」

何を考えたか知らないが、イヴァンは指を増やすどころか俺の中から親指を引き抜いてしまった。

「おいイヴァン……」
「うるせえ」

イヴァンは突っ込んでいた方の手で顔を覆うと、その顔を明後日の方向へ逸らした。

「お前は…ホントに……」
「何」
「…………」
「イヴァン?」

俺はイヴァンを見上げる体勢のまま問い掛けたが、イヴァンは何も答えなかった。…と、違和感を覚えてイヴァンの顔を覗き込んで。

「…見んなバカ。お前はホントに………俺を煽ンの、上手いよな」

イヴァンが熟れた林檎みたいに、耳まで真っ赤になっているのに気付いた。それからイヴァンはウウ、と獣みたいに唸って、いとしそうな目で俺を見た。
……なんだよ、それ。俺は堪えきれなくなって這いずって逃げようとし、膝を立てたらその間に割り込まれてしまった。

「ジャン」
「……ンだよ。イヴァン」

無理。無理無理。無理!!!なんだよこの甘ったるいムード。
イヴァンは顔を覆っていた手を外すと、俺の顔を覗き込もうとする。無理!俺は精一杯顔を背けた。でも顎を爪が立つほどがっしり掴まれて、無理矢理向かい合わされた。
イヴァンはどこか呆けたような顔で俺を見つめたが、その瞳には隠し様のない劣情の色が映っていて、確かに俺はドキリとした。
深いキスの合間合間で、言い含めるようにイヴァンが囁いた。その声色は、どこか欲情して掠れている。

「……俺以外の奴に挿れさしたら、殺すからな」
「バーカ。この、………心配性」
「慎重って言え。…ばァか」

顎を掴む手はそのままに、イヴァンのもう片方の手がするすると俺の体を下りていった。その手が、先走りを塗り込めるように俺の亀頭を触って、それで湿らされた指が俺のアヌスに触れる。

「っ、…ン……」

親指を先程まで飲み込んでいたソコは、イヴァンの人差し指の先を難無く飲み込んだ。しかし問題はそこからで、つまり、人差し指は親指より長いのだ。先は難無く入っても、後がキツい。俺は顔の筋肉を何とか緩めてイヴァンを見上げた。

「ゆっくりやってよ?坊や」
「俺は年増趣味はねえぞ」
「俺だってねえよ」

軽口を叩きあって笑う中も、イヴァンの指の出入は続いていた。さっき無理に親指を突っ込んできたのが嘘みたいな、丁寧な手付き。そのうちに中指も増やされて、俺は力を抜こうと深呼吸する。俺はイヴァンの指の出入が、段々速くなっていることに気付いていた。そら、イヴァンもオナニイくらいはしてたろうけど、この様子じゃセックスはご無沙汰だろう。…俺を気遣って、丁寧に解してくれてんだろうけど、まあ……。

「イヴァン。……もういい」
「良くねえよ」
「いーんだって」

と言いながらもイヴァンの目に、期待の色が映ったのを俺は見逃さない。

「お前のチ○ポくれよ。あと、手、ほどいてくれると嬉しい」

イヴァンは戸惑いながらも、とりあえず腕の拘束をほどいてくれた。俺はその腕をイヴァンの背に回して、イヴァンをぐっと引き寄せた。

「おいで、ボーヤ」
「………年増趣味はねえっての」
「ンー、良かった。お前が年増趣味だったら、俺はお前の守備範囲外だ」
「言ってろ」

俺達は顔を見合って、くっくっと笑い合った。俺は背に回した手を片手離して、手探りでイヴァンのベルトを外した。そのベルトをイヴァンが引き抜いて、自分でズボンとパンツを下ろした。イヴァンはやっぱり結構、…無理してたみたいで、俺のアヌスから指を引き抜くとすぐに、そこへ亀頭を押し付けてきた。

「…良いんだな、ジャン」
「オーケーオーケー、バッドボーイ。どうせ来週にゃ退院さ。この一週間は予備期間みたいなもんだし、もう全部治ってるよ」

俺はイヴァンの背をまた両手で抱き締めて、だから、と首を傾げて見せた。イヴァンは雄っぽい欲情しきった笑みを浮かべた。

「力、抜けよ」
「了解……っン、あ……あ、っく…ゥ………ッ」

解ってはいたけど、やっぱりすっげえ痛かった。でもイヴァンがある程度丁寧に解してくれたお陰で、どうやら切れてまではいないらしい。
イヴァンの着ているジャケットのせいで、イヴァンの背に立てた爪が何度も滑って、もどかしくなった俺は咄嗟にイヴァンの腰へ足を絡めた。するとイヴァンのシャツへ俺のペニスがぐっと押し付けられて、直接的な快感にうっかりイきそうになった。でもこんなことでイったらイヴァンに早漏と馬鹿にされそうなので、俺はなんとか堪えた。イヴァンはどうやら、俺が足を絡めたことに相当驚いたらしい。ぎょっと固まったイヴァンへ俺は囁く。

「イヴァン、奥まで……ッ」
「……煽ンなッつの!」
「ひッ……あ、ああッ!」

みちみちと肉の押し開かれる音が脳まで響いた。痛い、と言うよりはむしろ熱い。俺はイヴァンの激しいピストンに合わせて腰を振りながら、イヴァンのシャツへ自分のペニスを擦り付けた。

「イヴァ、ッン!あ、あ――ッあ、そ、こ…ッ!」
「ここか?」
「ひあッ!?」

俺は痙攣のようにがくがくと頷いた。イヴァンが俺の尻を掴んで、少しでも奥へと突き上げてくる。

「イヴァン!…俺、もう……ッ」

てっきり早漏!と詰られると思ったら。



<改ページ>
「……中に、出すぞ」

イヴァンは低い声で有無を言わさず呟いて、出入のスピードを更に上げた。――おいおい。お前もかよ――と、軽口を叩く余裕はなかった。俺はイヴァンのジャケットをぎゅっと握り締め、出来るだけイヴァンに縋り付く。

「あッ!ああッ!イ、――ク…………ッ!!」
「――ッ」

俺がイヴァンのシャツへザーメンを撒き散らして、そして一瞬遅れてイヴァンが俺の中にザーメンを吐き出した。

「んあ……あつ……」

イヴァンの射精は久々だったせいだろう、結構長く続いた。射精が終わっても、イヴァンは俺の中からペニスを抜かなかった。俺もイヴァンの腰に足を絡めたまま、腕だけをシャツから放した。

「イヴァン」
「…何だよ」

俺は腕を伸ばしてイヴァンの首を抱いた。そのままぐっと引き寄せれば、イヴァンと俺の顔は鼻先が触れそうなほど近くなる。俺はまだ劣情の色を残しているイヴァンの目を正面から覗き込んで、イヴァンも望んでいるであろう提案を代弁した。


「………もーいっかい」




<改ページ>
「……で、何の話をしてたんだっけ」

あの後、二回と言わず三回。一つおまけにもう一回――……みたいな、若さってスゴイ。みたいな展開があって、俺達はやっと体を離した。

俺は服を脱いでたからいいけど、ザーメンまみれになったシーツとイヴァンの服をどうするかと言う問題はとりあえず置いといて。

「車欲しいって言ったんだろてめえが」
「あー……そう言えば、そんな話だっけ。でも別に車要らねえわ」
「はあ!!??折角人が買ってやるって言ってんのに――……」

噛み付かんばかりのイヴァンを俺は手で制止する。

「…しばらくはお前の助手席でいいや」
「は………」
「いいだろ?お前も」
「……あ、ああ。良いけど…」

ばつが悪そうに顔ごと目を逸らしたイヴァンの顔は、隠しようがなく真っ赤だった。俺はその頭を、犬にするようにぐしゃぐしゃに掻き乱してやった。

「かわいい」
「…うるっせえ」

イヴァンが顔を逸らしたまま、じろっと俺を睨み付けてきた。俺はその頭に乗せていた手を離すと、その手をイヴァンの肩に置く。そしてどちらともなく顔が、近付いて、唇が、触れ――……

そうになった刹那。
コンコン、とノックの音が響き渡った。

「うわああ!?」
「うおおう!?」

俺達はばっと身を離すと、ノックの音がした方を、つまり扉を見た。

「ジャン?イヴァンもいるのか?」
「ジャン…さん……入っても…?」
「ベルナルド…ジュリオ…」
「俺もいるぜ、ジャン」
「ルキーノ……」

さあっと血の気が引いた。俺がイヴァンの方を見ると、ちょうどイヴァンも俺の方を見ていた。その顔は真っ青で、ひどく強張っていた。イヴァンが俺と、シーツと、自分のシャツを見比べる。俺は全裸。シーツとシャツはザーメンまみれ。

「ジャン?入るぞ?」
「わああ!!ちょ、ちょーっとタンマ!!」
「…ああ………?」

よっしゃ時間を稼いだ!……けどこんなん、どうしろって言うんだよ……。頭は真っ白。おいおい。俺は一体どこで間違ったんだ?俺のツキはどこへ行っちまった?

「…おい!どうすんだよ!」

イヴァンが小声にまくし立てた。

「うるせえ!お前も考えろ!!」
「ジャン?」
「何でもない!何でもないからもうちょい待って!!」

俺は服を着ればいいけど、イヴァンの着替えなんかないし、シーツの替えもない。どうする俺!?どうすんの!?

「おい、ジャン!!」
「ジャン?」
「ジャンさん……」
「ジャン」

う、うう、う――……ッ

イヴァンが俺を縋るような目で見た。おいお前そんなキャラじゃねえだろ!?俺を、頼んなお前も考えろくそ……イヴァンは弱りきった声で叫んだ。…おい!なんとかしろよ!?


「LUCKY DOG!」