「斯くして、俺のバージンは失われたのだった……」

俺は小声に呟いた。

「…まじで腰、痛いな」

俺は裸の腰を労るように揉んだ。俺は今シャワールームにいた。浴槽なんてものは戦時中にはなく、仕切りで区切られたシャワーが十数個並ぶ空間がここだ。深夜と言うことで、今は俺しかいなかった。
俺はシャワーの下に立つと、蛇口を捻って水を頭から被った。

「ぐわっ!?冷たっ!?――そうか、時間……」

俺は冷たいシャワーに凍えながら、深夜は節電のため電気を通さない、と言う規則を思い出した。だからクロエのやつ、風呂をパスしたのかと苦々しい気持ちになる。言えよ!いや言われても来たけど、心構えってもんが……

「くそ…」

冷水にぶるぶる身を震わせながら、俺は壁に手を突いてアナルに指を挿れた。

「ん…っ」

シャワーとはまた違う水音が耳朶に届いたような気がした。中出しされたあとはこうやって、精液を掻き出すのだと聞いたからやってるワケだが――……

「…結構クるな、自分でも」

俺は勃ち上がりかけている自身を見て苦笑した。丁寧に掻き出そうとするとどうしても指が前立腺に触れて、またどうしようもなく昂ってしまうのだ。

「まじで、誰もいなくて良かった」

もしこんなところを見られでもしたら、俺がホモだとかそんなロクでもない噂があっという間に#4中に回るだろう。そんなんでもし色々と女役やらされて、突っ込まれないとイけない変態になっちまったら生きていけねえ…

「くそ…あの、アホクロエ…っ」

俺は後処理がただの口実になっていることを自嘲しながら、空いた手でペニスを握った。滑る液体を滴らせるそれが冷水に流される度、熱いのか冷たいのかよくわからなくなった。先ほどのクロエとの行為を思うと、意志とは関係なしにアナルが疼いて、中の指を締め付けた。

「もう一回してえな…いや、俺流されやすすぎか……うあ。もうまじ変態……」

最奥までペニスを突っ込まれた直後では、指じゃ短くて落ち着かない。クロエを無理矢理引っ張ってくれば良かったと言う思いが過ったが、いやもしここでしたら、後処理が見付かるよりもっと駄目だろ…!部屋帰ったら襲ってやろうか…いや、だから、そうじゃなくて、もうやだホント変態―――

と、悶々としていると、ガラッとシャワールームの戸が開く音がした。……クロエか?
俺はとりあえず、アナルから指を抜いてペニスから手を離した。そして仕切りから顔を出すと、シャワールームの入り口を見た。


「……おおう」

俺も中々驚いたが、そいつはもっと驚いたようだった。俺を見付けるなりいつもの無表情が更に固まって、回れ右してシャワールームから出ていこうとする。

「ちょ、おい待て待て待て」

俺は慌ててそいつを呼び止めた。そいつがシャワールームのドアノブを握ったまま硬直する。……うおう、完全に恐れられてる………

「マキナ」
「……用事を思い出したので、失礼する」
「待てって。シャワー浴びに来たんだろ?もう何もしねえから浴びてけよ」
「…………」

マキナは疑うような目で俺を見た。実際疑ってるだろうなあ、と思う。マキナに取っちゃ、俺はレイプ魔みたいなもんだからな…。マキナは眉を潜めた。てっきりとにかく無理、と帰るものだと思っていたら、マキナは俺から幾つか離れた個室に、溜め息を吐いて入った。きゅっと蛇口を捻って、マキナがシャワーを浴び始める。

「こんな時間まで何してたんだ?」
「……自主トレ」
「まじか。何してんの?」
「走ったり筋トレしたり…」
「さすが大隊長」

口笛を吹いて茶化すと、マキナがシャワーを浴びながら睨んできた。

「『さすが大隊長』とか、やめろ。好きでやってるんじゃない」
「あ、悪い」
「ある男から、嫌がらせで任命されてる。辞めたい。向いてないんだ」
「そうなのか?俺は結構合ってると思うけど」
「…………」

マキナは微妙な顔で溜め息を吐くと、シャワーを再開した。じっと眺めていると、クロエが言った通りにマキナにも沢山の傷痕があった。

「…ユーゴ」

マキナの声は、怒気と困惑を含んでいた。

「何か用か」
「いや」
「用もないのにジロジロ見るな」
「大隊長命令か?」
「……あのな」
「て言うかお前、俺の前だとあんまり『マキナ』じゃないよな」
「何が悲しくて、色魔の前でまだ猫被るんだよ…」

マキナは心底呆れた顔で溜め息を吐く――

他の奴等の前じゃ凛としてやがるくせに、俺の前じゃ感情を荒げさえする。そう言うのってすごく、めちゃくちゃに甘やかしたくなるような虐めたくなるような…先日の淫行を思い出し、内心ゾクッとした。


「ああ言うのが求められてるのがわかってるからやってるだけだ。『機械のように冷酷無比なマキナ大隊長』そう言うのが良いんだろ――分かりやすくて」

マキナは自嘲的に笑うとシャワーを止めた。『マキナ』であるはずの大隊長は、普段からは考えられないようながさつな仕草で髪を掻き上げた。そしてこれまた普段から考えられない、意志のある瞳が俺を見据える。それからふっと、マキナは寂しげに笑った。

「お前といると、偽らなくてもいいから楽だよ」
「………ぇ」

何それ――……やばい。
年甲斐もなく、思春期の乙女のようにドキドキしてしまったじゃないか!俺、ギャップ萌なんですねまだ見ぬ父母…。
俺は頭を抱えた。しかし思春期のドキドキも、下半身に直結してしまうのが男のアレなところだ……
ええい、ままよ!乗り掛かった船だ!

「――あのさ、マキナ」
「何だ」

マキナは訝しげに問ってきた。心なし声のトーンも、いつもの『マキナ』より低い気がして焦る。俺は半ば死にたい気持ちになりながら、……提案した。


「マキナ、童貞」
「はあ?…喧嘩売ってるのか」
「いや、そうじゃなくて――くれない?」
「……は?」
「童貞、下さい」
「…………」

マキナは硬直して、いつもの無表情に戻った。これはまじで嫌われたかなさすがに…と見守っていると、


「――な、なな、なっ……に考えてんだこの色魔ああああ!!!!!」
「声が大きい…!」
「ぐっ……」

マキナはヤカンみたいに真っ赤になって、分かりやすく狼狽えて後退りした。しかし仕切りの中だから、すぐに背が壁にぶつかってしまう。やってしまった…俺も今更狼狽えた。

「ごめんなさい俺が悪かったです嘘じゃないけど嘘です…」
「どっちだよ!?」
「全然嘘じゃなかったけどなかったことにしてください!」
「お、ま……っ」

きっと俺も今、マキナに負けず劣らず真っ赤なんだろうとユーゴは思った。あと、マキナが咎めないから呼び捨てタメ口してるけど、マキナは俺の上官だぞ!?ヘタしたら処罰くらってもおかしくないくらいの発言だ今の…!!一時のテンションで何を血迷ってんだ俺は!!!

「……ユーゴ」
「あい」
「こっち向け」

促されて渋々顔を上げると、マキナが複雑な顔でこっちを見ていた。マキナは濡れた髪をいじりながら、一言一言区切るように言う。

「……まじで、欲しいのか。その、…童貞が」
「ぐっ……ええと、その、はい。欲しいです……」
「…………やろうか」
「え?」
「やるよ。……まじで、欲しいなら」

マキナはそれだけ言うと、頬を押さえてそっぽを向いた。俺はマキナの言葉を、咀嚼しようと頭の中で反芻する。欲しいなら、やるよって――童貞を。

「まじで……?」
「嘘吐いて俺が、何か得すんのか色魔」
「え、あ…いいの?まじで?」
「……要らねえのかよ」
「いや、下さい」
「……あー。うん」

マキナはこの状況に酷く戸惑っているらしかった。俺自身まあ、うまく行き過ぎて逆に不安だけど。俺はマキナを手招きした。マキナがげっと眉をしかめる。

「此処かよ…誰かに見られてみろ、お互い一貫の終わりだぜ?」
「大隊長はイメチェンになっていいんじゃないか?」
「……うるせえな、くそ。大隊長呼ばわりするならもっと敬えガキ」
「大して変わんねえだろ童貞」
「てめえ覚悟しとけよ…」

マキナは小さく舌打ちして仕切りを出ると、だるそうに俺のいる仕切りに入ってきた。

「後ろ向け」
「立ちバック…優しさ?」
「黙れ色魔」

マキナの剣幕に、恐れおののいて俺は後ろを向いた。壁に両手を付いて、首だけ振り返る。

「ヤり方、わかんの」
「黙って前向いてろ!この…」

マキナの濡れた指が、いきなりアナルに捩じ込まれた。大して慣らしもしないうちに、二本目も入ってくる。先ほどクロエのモノを咥え、そして後処理をしていたそこは簡単にマキナの指を咥え込んだ。

「…く、っ……」
「慣れてんな、さすがに」

マキナが口笛を吹いて指を抜き差しした。中で指をばらばらに動かされ、指の間接で前立腺を押されれば、それだけでイきそうになる。

「――いやむしろ何でお前、慣れてんの!?童貞だろ!?」
「色々あるんだよ色々…三本目、いいか?」
「んな――…っひ、ぅ……」

会話を打ち切るように、マキナは三本目を挿入した。アナルを拡げているのと別の手が俺の横を擦り抜けて、出しっぱなしのシャワーを切った。

「節水とか、エコだねえ」
「世の中でもっともエコじゃないもの知ってるか」
「なに」
「――男同士のセックス」
「はは。ちげえねえ」

シャワーを止めたことで、マキナが指を抜き差しする濡れた音が嫌に耳についてきた。音が良く聞こえるようになると感覚まで妙に敏感になって、ちょっとの刺激でも果てそうになる。目を伏せて堪えていると、胸に突然鈍い痛みを覚えた。ぎょっとして見下ろすと、マキナが俺の乳首を掴んでいた。

「ちょ、ん、な……ッば、か…ッ!?」
「…胸も感じんの。どんだけだよ、お前」
「…うるせえよ!」

首だけ振り返って噛み付くように言うと、その唇をマキナの唇で塞がれた。前の仕返しみたいに口内を好き勝手に犯されて腰が抜けそうになる。その間もマキナの手はアナルを拡げ、乳首をこねくり回していた。

「つかお前、…絶対、童貞じゃない…!」
「俺の方が上手いからって僻むなよ――そろそろ、良いだろ」

仕上げとばかりにマキナの指がアナルの縁をなぞり、それから抜けていった。マキナは乳首を弄る手はそのままに、俺の尻を片手で支えて、その切っ先を入り口に当てた。その熱さに思わず息を呑む。マキナはゆっくりと、しかし躊躇いなく挿入してきた。

「そんなに、痛くないだろ」

マキナは熱の篭った声で囁いて、あっと言う間に最奥まで押し込んでしまう。そして乳首を弄っていた手を下ろすと、その手で俺のペニスを握った。

「――おい早漏。ドロドロじゃねえか。もうイきそうか?」
「お前こそガチガチじゃねえかよ…イきてえならさっさとイけ、よッ」

そう言いながらマキナのモノを締め付けてやると、マキナがぐっと息を詰めた。

「…煽ってんじゃねえよてめえ!」

マキナはぐっと腰を引くと、それを最奥まで一気に押し込んだ。その振動でそそり立った俺のペニスがぶるっと揺れた。俺は半ば壁に縋りつくようにして体を支える。マキナの容赦ない責めに、俺は息も絶え絶えに喘いだ。

「…マキナ」
「何だよ」
「俺まじでもう、無理…」
「はあ?」
「あッ、ひああ!?」
「さっきの威勢はどこ行ったんだよ、おい」

マキナは意地悪く笑うと、俺の前立腺を狙って突き上げた。同時にペニスを擦り上げるスピードも上げる。

「誰が早漏だって?」
「う、…俺」
「今度言ったら殺すからな」
「この、エセ童貞…!!」
「うるせえよ、ばーか」
「ぁ、もっ、イ……ッ!」

言葉を言い終わらないうちに、俺は壁へと精を吐き出した。その反動で腸壁がぐっと締まって、マキナも俺の中へ精を吐き出す。胎内に精を受けながら、俺はまた首だけ振り返った。

「…脱童貞?」
「うるせえよ!」